
ピサの斜塔の実験は作り話?ガリレオが考えた「落ちる速度」

ピサの斜塔から物を落として実験したっていうエピソードを聞いたことがあるけど…あれってどんな話だっけ?重いものと軽いものを同時に落とす――そんな実験だった気がするけど…?

Q. ピサの斜塔の実験とはどんな話?
「イタリアの名所”ピサの斜塔”から物を落として実験した」というエピソードを聞いたことはありますか?このエピソードはいつ誰がどんな実験をした話なのでしょうか?
A.「ガリレオが重さに関わらず同じように落ちることを示した」という逸話があります
16〜17世紀頃、学問の世界では、古代ギリシアの哲学者アリストテレスの考えが強く信じられていました。その中でも有名なのが、「重いものほど速く落ちる」という考えです。
そこで語られるのが、イタリアの科学者ガリレオ・ガリレイの有名なエピソードです。ガリレオは、当時の学問の権威である自然哲学の教授たちに果敢に立ち向かっており、次のような劇的な話が伝えられています。
ガリレオは誰もが知るピサの斜塔で「落下の実験」を行いました。大勢の観衆が見守る中、ガリレオはピサの斜塔の上から鉄の球と木の球を同時に落とします。すると――2つの球はほぼ同時に地面へ。かたずを飲んで見守っていた観衆は大喝采を送り、自然哲学者たちは苦虫をかみつぶしたような顔をしました。従来の常識は覆されたのです。

うわあ、まさに常識をひっくり返す大実験ですね!ピサの斜塔で実験するなんてみんなの注目を集めそう!

ピサの斜塔の実験、実はやっていない?
実はこの有名な話、後世の伝記による「伝説」である可能性が高いとされています。ガリレオが斜塔から物を落としたという確実な記録は残っていません。
このエピソードはガリレオ自身の著作には登場せず、最も古い記録は、弟子の ヴィンチェンツォ・ヴィヴィアーニ による伝記に見られるものです。ヴィヴィアーニは、師であるガリレオへの深い尊敬から、「真理を追い求める科学者」を印象的に描こうとしたのかもしれません。
また、「ピサの斜塔」は誰でも知る有名な建物で、“常識を覆す実験の舞台”として非常に象徴的でした。
そのためこの話は、「実際に行われた劇的な公開実験」というよりも、ガリレオの考え方や功績を分かりやすく伝えるための象徴的なエピソードとして広まっていったと考えられています。実際、重い物体と軽い物体がほぼ同時に落下するという事実は、当時すでに知られていたようです。
重要なのは、「本当に塔から落としたかどうか」ではありません。そこに込められた考え方なのです。

えっ、本当にやったかどうかは分からないんだ…でも、ガリレオが落下の実験をしたっていうことが印象的に伝わる話だね!

ガリレオが本当にしたのは「測って数で捉えること」だった
ではガリレオは、実際にはどのような「落下実験」をしたのでしょうか?
ガリレオは、球を真下に落とすのではなく、斜面を使って運動をゆっくりにし、球が転がる様子を観察しました。そしてどれだけの時間でどれだけの距離を進むのかを丁寧に測定しました。そしてそこから、「落下する物体の進む距離は時間の2乗に比例する」という法則を見いだします。

本当に重要だったのは、塔から物を落とすような派手な実験ではありません。実験や測定を繰り返し、「運動を測る」という発想そのものです。
これは、自然現象を“数”で表すという大きな転換でした。それまでの学問は、「なぜそうなるか」を言葉で説明するものでしたが、ガリレオは「落下の速度」を数で捉えようとしたのです。

重要なのは“塔から落としたかどうか”ではない。世界を“測り、数で語る”という考え方を生み出したことなのじゃ。それによって、運動も時間も、やがては「数の世界」で扱われるようになっていくのじゃよ。
もっと深く知りたい方へ

物が落ちる速さはどう変わるのか。「速度」とは、そもそも何なのか。今では当たり前のように思えるこの問いも、ガリレオの時代には“謎”そのものでした。
ガリレオは、斜面を転がる球を何度も観察し、様々な実験を行いながら、少しずつ落下運動の法則へ近づいていきました。しかし、その道のりは決して一直線ではありませんでした。ガリレオとともに、「落下の理論」が生まれる瞬間を旅してみませんか?
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『ガリレオの挑戦1速度の謎に挑んだ30年の軌跡』
