
STEP2
幾何学の父ユークリッドとは?
「幾何学に王道なし」――そう語ったとされる古代ギリシアの数学者ユークリッド。学問都市アレクサンドリアで体系化された幾何学は、今もなお数学の基礎として息づいています。ここでは、幾何学の父と称されるユークリッドの人物像とその歴史的背景を調べてみましょう。
HOME > すうがく教室 > ユークリッド幾何学 目次 > Step2


さて、ここからは“幾何学の父”とも呼ばれる古代ギリシアの数学者について触れてみようかの。その名は――ユークリッドじゃ。
ユークリッド幾何学って言葉は聞いたことがあったけど…ユークリッドって実は人の名前だったんですね!どんな人物なのか気になります。


へぇ〜、僕はその名前すら初耳だよ。そんなに有名な人なら、きっと数学の歴史で大事な役割を果たしたんですよね? 博士、ユークリッドって一体どんな人なんですか?
ふむ、ユークリッドは『原論』という大著を著し、古代ギリシアの数学を体系立てた人物なのじゃ。せっかくの機会じゃから彼が活躍したとされるヘレニズム時代のことを話しておこうかの。

ユークリッドとはどんな人?
ユークリッドは、古代ギリシアを代表する数学者のひとりで、今日の数学の基礎ともいえる大著『原論』の著者として知られています。
この『原論』は、論理的な証明を体系化した初の本格的な数学書であり、のちの数学だけでなく、哲学や自然科学にも大きな影響を与えました。

「ユークリッド」という名前は英語読みで、ギリシア語では「エウクレイデス」と発音されます。ユークリッドは紀元前300年頃、エジプトのアレクサンドリアで活動していたとされますが、その生涯や人物像については、はっきりした史料が少なく、詳しいことはほとんどわかっていません。
ユークリッドが活躍した時代
ユークリッドが活躍したのは、古代ギリシアのヘレニズム時代と呼ばれる時代です。この時代、文化の中心はアテナイ(ギリシア本土)から、エジプトのアレクサンドリアへと移っていきました。
アレクサンドリアは、マケドニア人のプトレマイオス朝によって統治され、地中海各地、西アジア、インド、黒海北岸など、さまざまな地域から人々が集まる国際的な学術都市となっていました。この都市には、王立科学研究所「ムセイオン」と、それに付属する大図書館が設けられ、天文学や数学などの科学が大きく発展する土壌が整っていたのです。
ユークリッドも、このアレクサンドリアで学問的な活動を行っていたとされています。

へぇ、アレクサンドリアって、いろんな国の人が集まる国際都市だったんですね。古代の“学問の都”みたいな感じですね!
すごいなあ。図書館や研究所まであって、科学者にとっては夢のような環境だったんじゃないですか?


そうじゃな。アレクサンドリアには知識が世界中から集められ、学者たちが互いに学び合える場があった。そんな豊かな環境が、ユークリッドやアルキメデスのような偉大な才能を育んだのじゃよ。
学問は何の役に立つ?
ユークリッドにはこんなエピソードがあります。あるとき彼の講義を聞きに来た生徒が、「これらの命題は何の役に立つのですか?」と質問しました。するとユークリッドは使用人を呼び、次のように言ったと伝えられています。
「あの学生は、お金がほしいようだから渡しておきなさい。彼は学ぶことは利益にならなければならないと思っているようだから」
当時のギリシアでは、学問は「知そのものを追求する営み」として重視されていました。この逸話もまた、数学は実用のためだけに学ぶものではないという、ユークリッドの思想を象徴するものとして語り継がれています。

なるほど…。学問は“役に立つかどうか”じゃなくて、“真理を追究すること”自体に価値があるっていう考え方なんですね。
うーん、でも僕なら“役立つかどうか”が気になっちゃうかも…。でも、役に立たないと思ってたことが、あとで大きな意味を持つこともあるのかもしれないな。


その通りじゃ。ユークリッドの返答は、学問を利益と結びつける発想をたしなめたものじゃ。すぐには役立たぬように見える学びも、やがて人類の知を豊かにし、大きな力となるのじゃよ。
幾何学に王道なし
ユークリッドは古代エジプトの王 プトレマイオス一世に幾何学を教えていました。あるとき、プトレマイオス王が「もっと簡単に、近道で学ぶ方法はないのか?」と尋ねたといいます。そのときユークリッドは、こう答えました。
「幾何学に王道はありません」
これは、たとえ王であっても、学問に近道はないという意味です。このエピソードは、努力と理解を積み重ねることの大切さを語るものとして、今日でも引用され続けています。

へぇ〜。王様ですら“近道はない”って言われたんだ。僕たちがコツコツ勉強しなきゃいけないのも当然だよね。
うんうん、なんだか励まされる言葉だなあ。地道に学んでいけば、私たちでもユークリッドの学問に少しは近づける気がしてきた!


その心がけこそ大切じゃ。幾何学に限らず、学問には“王道”はない。だからこそ、一歩ずつ積み重ねていく学びが、やがて大きな力になるのじゃよ。
次のステップではユークリッドの名を歴史に刻んだ彼の著作――『原論』を紹介するぞ。
\ Mathematicaでは電子書籍を販売しています /

ポゥじいとめぐる『数』の旅 シリーズ
ポゥじいとめぐる『数』の旅シリーズは、数学史を対話形式でわかりやすく解説した電子書籍です。中高生の学びから、大人の知的好奇心まで幅広く応える入門書。数の歴史や発見の物語を、やさしく楽しくお届けします。
チャプター
Step1 . 三角形の合同・相似から学ぶ!図形の基本
– 三角形の合同条件
– 三角形の相似条件
– 幾何学と古代ギリシア
Step2. 幾何学の父ユークリッドとは?
– ユークリッドとはどんな人?
– ユークリッドが活躍した時代
– 学問は何の役に立つ?
– 幾何学に王道なし
Step3. 幾何学の教科書 原論
– ユークリッドの原論とは?
– 原論の構成
– 古代ギリシアの量の捉え方
– ユークリッドクイズ
– 数学書クイズ
キャラクター紹介

ポゥじい
Pou-Ji
フクロウの博士。数学のことならなんでも知っているけど、ちょっぴりうっかり屋さん。口ぐせは「学ぶって最高に楽しいんじゃよ!」

スウカ
数花
数学が得意な中学生。しっかり者で好奇心旺盛。歴史の知識も豊富でクイズが得意。数学の謎を見つけると目をキラキラさせる。時々鋭い指摘をする。口ぐせは「うんうん、わかってきたかも!」

カズオ
数男
数学はちょっと苦手な中学生。最近数学の面白さに気づいて学び始めた。のんびりマイペース。じっくり考える力はピカイチ。口ぐせは「よくわかんないけど、なんかおもしろそう!」

